モロッコで聖者の町と言われているムーレイ イドリスに行ったことがある。
ここは聖者ムーレイ イドリスの廟があって、訪れる人も多い。
メクネスから着いて、町の中をぐるっと歩き、廟の所まで行ったが、
非イスラム教徒は入れない。
食べ物を売る店や市場などを物色したら、やることがなくなってしまった。
「もうメクネスに帰ろう」そう決めてバス乗り場に行くと、バスはなく
乗り合いタクシー(複数の人が一緒に乗るタクシー)の場所には長蛇の列。
これじゃあ、いつになったらメクネスに帰れるか分からない。
炎天下に並んで待っているのはきつかったが、それしか方法はなかった。
どのくらい待ったのだろう。ようやくタクシーが来て、私も乗ろうと思った
その直前、誰かが私を制止した。静かに、でも力強く…
見ると若い男が私を制止しながら、誰かにおいでおいでと合図している。
その方向に目をやると、彼の恋人らしい女の人が家の陰から出て来て、
そのタクシーに彼と一緒に乗りこんだ。
文句を言っても無駄だと分かっていたけど、何か言わずにはいられなかった。
「こうやって、モロッコの女の人は男の人に守られているのだなあ…」
ようやく来たタクシーの中で敗北感のような複雑な気持ちを抱えたまま
私はメクネスにもどった。
この出来事はほんの些細なことだけど、ずっと私の心の中に沈殿していて
何気ないところで、顔を出す。
「守られる人生って結構いいかもしれない。」
「でも本当に楽しいことを知らずに人生終わるかも。」
「でも、それがどうしたの。何も知らなければ、知らないでもいいじゃない」
私の中で答えはまだ出ていない。
希林
初めまして。
10代の頃に学校の図書館で浅野さんの「パリのエトランジェ」を見てから、あの1冊は今でも私の大切な1冊です。
浅野さんが撮られる写真、これからも楽しみにしています。
asano
メールありがとうございます。「パリのエトランジェ」を出版してから
ずいぶん月日が経ちますが、こういうコメントを貰うととても嬉しいです。
これからも自分の納得できるような写真を撮っていきたいと思います。