先日、風邪を引いて寝ていたら知り合いの人から差し入れがあった。
容器を開けてみると懐かしいおかず、煮菜が入っていた。
煮菜というのは新潟の郷土料理。秋の終わりに体菜という菜っ葉を塩漬けにし、
それを塩出ししてから煮て味付けをしたもの。各家庭
によって中に入れる具も少しづつ違う。
私の家では塩出しした体菜(大鍋に体菜を水から入れ、このみの塩加減になるまで2、3回水を変えて茹でる)
を食べやすい長さに切り、ダシが入った鍋に入れて煮、最後に酒の粕を入れていた。
具は打ち豆だけの時もあれば、油揚げが打ち豆と一緒に入っている時もあり、
味付けは体菜に残った塩だけだったと思う。
薄暗い台所には冬の間、大きな鉄鍋に大量の煮菜があった。
小さい頃から冬になると、ずっとこれを食べ続けていたので、私の中で新潟の長くて暗い冬イコール煮菜。
という図式ができてしまっていて、煮菜には悪いけど「垢抜けしない料理だなぁ」とずっと思っていた。
煮菜は友達が遊びに来てもごはんのおかずには出したくなかった。
それから年月が経ち、東京、フランスと生活するうちに、煮菜を食べる機会もあまりなくなっていき
煮菜のことも忘れかけていた。
何年か前、フランスのシャンブルドット(民宿)を訪れた時、ここのマダムが庭でとれた菜っ葉で
料理をしてくれた。食べてみるとこれが何となく煮菜の味に似ている。
「新潟から遥か遠いフランスにも煮菜に似たお惣菜があったなんて…」
この世の中には自分の顔に似た人が3人いるらしいから、煮菜だって同じような味が存在したって
ちっともおかしくない。
知り合いの人が煮菜と一緒に置いていったメモには
「この煮菜はブルゴーニュ風の味付けなんです。ご賞味ください」
と書かれてあった。
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