モロッコの首都ラバトに行った時のことだった。
まだ朝の光の柔らかいうちに写真を撮ろうと、私は早起きしてホテルを出た。
前日の夕方、ここに着いたばかりで町の様子はよく分からなかったけど、
人のいる方に行けば、何とかなるだろう。
まだ閉まっている店が多かったが、カフェやパン屋はもう開いていて
一日が始まろうとしていた。
カフェでパンと「モアチエ、モアチェ」というコーヒーと牛乳が半分ずつ
入っているモロッコ風カフェオレを注文。朝日がカフェのテーブルにあた
って気持ちがいい。
「さあ、また歩き始めよう」
カメラを右手に持ち、すたすた歩きだしたその時、どこからともなく黒い服
を着て、スカーフを被ったお婆さん(といっても50代くらいかも)が現れた。
私の顔とカメラを交互に見て、いぶかしげな顔をしている。
「何か変な人…』と思ったのとゲンコツが私の頭にとんできたのが同時だった。
余りのショックと殴られた頭の痛さで呆然となり、私は何がなんだか分からない状態。
ふと前を見ると、道路の向こう側にあるカフェにいたおじさんたちが、一斉にこっちを
見て何かジェスチャーをしている。
手を頭にやり、その手を降ろして心臓のところに持っていき、少し前屈みになって
お辞儀のようなジェスチャーをしている。
「頭がおかしいのだから、勘弁してください」
おじさんたちは何回も何回もその動作を繰り返していた。
ラバトの広場
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